日本財団 図書館


 

・W.L.(Water Line)やB.L.(Buttock Line)に平行でない桁板
この中には、図面指示寸法もアイマイな場合がある。「1.5 図面表示寸法」に詳しく示すことにする。
以上の話をまとめると、展開とは、構造部材を素材(板材・形材)から切出す形状を求めること、つまり取材形状を出すこと、と言うことができる。
展開を知らないと、カッティング・プランは書けず、したがって材料発注もできない。
この取材形状を出すということを、更に考えてみよう。
リバースエンヂニアリング(Reverse Engineering)という言葉がある。自動車や家電などの量産製品で、他社新製品を組立の逆手順で分解していって、その内容を吟味し、自社の同種開発の参考にすることを意味する用語である。リバースエンヂニアリングで最後は部品単位の最初の形状に行着く。この最初の形状は全工程を逆さに辿った帰結である。
造船の展開も、このように考えたい。後工程の全ての要件を織込んでおく必要がある。どのように組立てるから、どのように加工しておくか、そのように加工するのなら、このように展開しておく。これが展開の本質である。このテキストでは、話は作画(アナログ)現図に限られるから、撓鉄なかんづく熱収縮のみ考慮するほかないが、コンピュータによる数値(デジタル)現図の場合、当然に組付溶接による収縮変形も配慮するのが展開となる。
ちなみに一般図学で言う展開とは、「空間図形をすべてが実長で表わされる平面形状にすること」である。注意しておきたい。
1.2 空間状況を直観
展開作業に当たっては、まずその展開する部材の形状のあらましを、宙に想い浮べる必要がある。心眼で、その部材が船体に組付けられている有様を、じっくり見詰めるのである。これには、すでにでき上っている船の構造を、常々注意深く眺めておく修練が大切である。昔の現図工は、円筒を斜めに切ると、切り口は楕円になる、このことを、先輩が故意に教えてくれず、自分で大根を包丁切りにして、悟らされたと聞く。その体で考えた体験を分析すれば、どこに楕円の長径と短径が現われるか、自明になってくる。
例えば、和菓子の羊かんを斜めに切ってみよう。その切口は一般的には平行四辺形になり、その辺の長さは、羊かんの幅・厚さのそれぞれより長く、辺が作る角度は直角でなく、一方が直角より大きい「開き度」なら、一方は直角より狭い「窄み度」になる(図2.1.1)。
この斜め切口形状の展開とは、その平行四辺形の辺と角度の実際の大きさを求めればよいことになる。つまり展開の方法は、辺=線の「実の長さ=実長」と、線のなす実物の「角度=実名」を求める。

026-1.gif

図2.1.1

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION